2021.01.19
今月は、アン・バートン(1933 - 1989 )オランダを代表する女性ジャズ・ヴォーカリストです。
アン・バートン(本名 ジョアナ・ラファロヴィッチ)は、1933年3月4日アムステルダム生まれで、1955年にプロに転向しています。ビリー・ホリディの歌に影響を受けたと語っています。
歌う曲は彼女自身の考えから、スローなものが多いように感じますが、どのアルバムでも一言一言をかみしめるように感情を込めて歌詞と情緒を大切に歌っている様に思います。
彼女の作品で最初に聞いたのが、2枚目のアルバム『BALLADS & BURTON』(1969年作品)いずれもスローでじっくり聴かせるものばかりなので、これらの歌のいずれからも暖かさと心地よさが伝わってきます。最初のアルバムと同じコンセプトを持った内容で、ピアノ・トリオのメンバーは全て同じです。少し変化をもたらせようと考えたのでしょうか、サックスだけがアルトからテナーに変わっています。“TRYLITTLETENDERNESS”やビリー・ホリディも歌っている“THAT OLE DEVIL CALLED LOVE”は素晴らしいと思います。何より1番目のアルバム『BLUE BURTON』(1967作品)オランダのグラミー賞といわれる1968年度の「エジソン賞」受賞作品です。”ビリーの名唱の”I CAN’T GIVE YOU ANYTHING BUT LOVE“や”YOU’VE CHANGED“、ガーシュイン“BUT NOT FOR ME“など、あまりセンチメンタルにならずに聴かせてくれます。どちらかも非常に録音が良いです。そしてピアノのルイス・ヴァン・ダイク(pf)ですが、本当に端正なピアノ弾きで伴奏も上手く、自身のトリオ・アルバムも多く出しています。
40年の時を経て、上記の2枚に沿って2作品を出しています。『BALLADS IN BLUE』(2004年10月録音)『THE SUMMER KNOWS』(2007年4月録音)こりらも素晴らしい内容です。
彼女は、選曲の感覚が素晴らしく古いスタンダードからザ・ビートルズをはじめとしてコンテンポラリーなポップ・ナンバーまで広い範囲から歌詞の良い彼女の歌に適したナンバーを捜してきて彼女自身のものとして歌ってしまいます。ある時のインタビューで、「私は、楽譜は読めません」という答えが出たようです。
『MISTY BURTON』(1973年)来日記念盤、レギュラーのケン・マッカーシー(pf)と稲葉国光(b)村上 寛(ds)のトリオでのライブ、なかなかの好演です。『BURTON FOR CERTAIN』(1977年 トリオ)ザ・イーグルズの”DESPERADO”やポール・ウィリアムスの”RAINY DAYS AND MONDAYS”そんな彼女らしい選曲。どの曲も初めから彼女のために書かれたナンバーの如く彼女流に消化して歌ってしまうところは見事という他ありません。
今年で亡くなって約30年余りとなりますが、歌詞を大事に情感豊かに歌い上げるバラードは、いつまでも心暖まるものです。